秋も深まり、朝夕はめっきり冷え込むようになってまいりましたが、皆様、お変わりありませんか?
さて、今月のトピックのテーマは、なぜフッ素でむし歯が予防できるのか。についてです。
フッ素について若林健史先生が週刊朝日に投稿されたものを載せます。
脱灰や再石灰化の解説つきですので、是非、読んでみてください。
~むし歯予防のために水道にフッ素を添加する国がある? 現役歯科医が効果的な使用法〈週刊朝日〉~
フッ素は自然界に存在する元素の一つで、地中や海中などに含まれる物質です。
19世紀に、アメリカのある地域でフッ素の化合物であるフッ化物(以下、フッ素)を多く含んだ水を飲んでいる人々にむし歯の発生率が少ないことをつきとめた研究が発端となって、むし歯予防に使われるようになりました。
アメリカの多くの州、オーストラリアやアイルランドではむし歯予防を目的として、上水道にフッ素が添加されています。
日本では一般的な歯みがき粉の多くにフッ素が含まれていますね。
なお、フッ素の毒性については、大量に飲み込んだ場合に起きることで、適量を使っている限り、全く問題はありません。
なぜフッ素でむし歯が予防できるのか?まずはむし歯になる仕組みを説明しましょう。
むし歯菌は歯に糖質があるとこれをエサにして食べた後、酸を発生させます。
歯の表面を覆っているエナメル質は酸に弱く、口の中が酸性に傾くと歯の表面からカルシウムやリン酸などのミネラルが溶け出します。
これを専門用語で脱灰(だっかい)といいます。
人間のからだには自浄作用があり、数十分たつと唾液の力で中性に戻り、脱灰が止まり、その後、「再石灰化」といって、唾液中に溶け出したミネラルが歯に戻り、修復されるようになっています。
ところが甘いものを常に口の中に入れていたり、歯みがきを怠っていたりするとこの「脱灰→再石灰化」がうまくいかなくなり、歯が溶けてむし歯となるのです。
エナメル質の97%はハイドロキシアパタイト(以下、アパタイト)というリン酸カルシウムからできています。
アパタイトの結晶は象牙質に対して垂直の棒状になっており、「エナメル小柱」と呼ばれています。
むし歯はこのエナメル小柱のすき間から起こりやすいのです。
フッ素はこのすき間に入り込み、エナメル質を強化して、むし歯を予防するのです。
フッ素がしみこんだ歯は酸に強く、触れても簡単には溶けなくなることから、むし歯になりにくくなるのです。
■大人のむし歯にこそ、フッ素が効果的
フッ素は子どもの歯に効果的といわれます。
生えてきたばかりの歯はアパタイトの結晶がすき間だらけで、例えると軽石のよう。
子どもがむし歯になりやすいといわれるゆえんです。
これが成長とともに唾液や食品からミネラルを取り込み、成人の頃にはすき間が減って、硬く、じょうぶになります。
実際、子どものむし歯治療では、奥歯の「6歳臼歯」(親知らずを除き、口の中の一番奥に生えてくる上下4本の奥歯。
6歳頃になると生えてくるため、こう呼ばれる)でも、ドリルでサクサク削れますが、大人の歯は硬いため、処置が大変です。
高齢になっても硬くなり続けるので、70代、80代の歯は削ろうとすると、力仕事になります。
つまり、加齢にともなって歯は硬く、むし歯になりにくくなるのは事実です。
しかし、盲点があります。「大人のむし歯」といわれる「根面(こんめん)う蝕(しょく)」は、歯がじょうぶでも比較的、簡単に起こるのです。
参考までに「う蝕」とはむし歯のことです。
加齢によって歯肉が縮んだり、歯周病によって歯ぐきが下がったりすると歯の根の表面が露出してきます。
この部分が根面です(歯が長くなったと感じるときは要注意です)。
歯の根面はエナメル質がなく、象牙質をセメント質が覆っています。
セメント質と象牙質はやわらかく、ざらざらしている組織で、歯垢がたまりやすいため、むし歯になりやすく、いったん、発症すると急速に進行します。
さらに「根面う蝕」の大きな問題は治療が難しいことです。
歯のかみあわせ面である歯冠部(歯茎より上の部分)とは違い、削り方が難しく、コンポジットレジンなどの充てん物が詰めにくいのです。
子どものむし歯が減少する一方、この「根面う蝕(根の部分のむし歯)」が近年、増えており、歯科の中でも問題となっています。
しかし、この部分にフッ素を塗布するとむし歯の予防効果が得られることがわかってきたのです。
つまり、大人もフッ素を積極的に使ったほうがいいということです
フッ素の効果的な使い方としては、まずフッ素入り歯みがき粉を毎日使うことです。
子どもの場合、濃度500ppmから年齢に応じた量を使うことが薦められています。
「3~5歳用」などと年齢別に表示されているので、参考にしましょう。
大人の場合、好みのものを使えばいいでしょう。
なお、2017年の3月に諸外国と同様の1500ppmまでフッ素の基準が引き上げられ、高濃度のフッ素入り歯みがき粉が登場しています。
さらに子どもも大人も、2、3カ月に1度、歯科医院で定期的にフッ素を塗布してもらうといいでしょう。
歯科医院では9000ppmという高い濃度のフッ素を使います。
安全性に問題はありません。
WHO(世界保健機関)はフッ素を使ったむし歯予防策を推奨しており、歯みがき粉(フッ素濃度1000ppm以上)の濃度が500ppm上がるごとに、むし歯の予防効果が6%ずつ高くなることを報告しています。
以上です。
最近は、フッ素入り歯磨き粉も高濃度で安価なものも販売されていますので歯科医院に相談いてみると良いですね。
さて、今月の診療時間、日時についてですが、6日(土)、7日(日)が神奈川の学会があり、院長不在のため、その週の日時が変更し、8日(土)が休診となりますので、振替として3日(水)が10-20時まで、5日(金)が10-17時までと変更になりますのでよろしくお願いします。
秋冷日増しの候、くれぐれもお体をお大事になさってください。