非歯原性歯痛について

今回のトピックは「非歯原性歯痛」についてです。

歯痛が起こって歯科医に行ったのに「問題なし」とされるような場合、「非歯原性歯痛」という病気が考えられます。
実際は、まだ認知度が低いため不必要な歯の治療を受けている人が多いと言われています。

歯の痛みというと、虫歯や歯周病が原因と考えがちですが、そうでない場合もあります。
聞いた話ですがある患者さまが、歯科医院で診察を受け「歯周病が進んでいるので、その治療が必要」と言われたのですが、いくら通院しても奥歯が痛むのは変わらない…同時にかぜをひき、かかりつけの病院の医師との雑談で「歯の痛みが治まらない。坂道を上ったり、ちょっと走ったりしただけで奥歯が痛む」という話をすると、一度検査を受けることを勧められたそうです。
そこで初めて聞かされたのが「非歯原性歯痛」という病名。
受けた検査は血液検査とレントゲン。
その後、心電図、カテーテル検査も行ないました。
これらの検査で判明したのはその患者さんには「動脈硬化」があり、それにより心臓の筋肉を養う冠動脈が狭くなっていたということです。
その影響で血流が悪くなり、心筋が酸素不足になり、歯の痛みとなって現れていたとのこと…病名は「狭心症」でした。

非歯原性歯痛は、「歯以外の原因による歯の痛みのこと」を指します。
その中の一つに、狭心症が原因で起こる歯の痛みがあるのです。
狭心症の症状は胸に起こると考えられがちですが、関連痛(放散痛)として、歯やあご、腕や首の付け根などに痛みが出ることあります。
さらに非歯原性歯痛には筋肉の痛みである筋・筋膜痛が原因になっているものもあります。
筋・筋膜痛の歯痛の治療は、まず習慣を自覚してもらうところから始まります。
その場合、まず無意識に歯をかみしめていることを自覚してもらい、次に噛みしめるのを止めるように心がけるよう意識する、更に1時間おきに口を大きく開けるなどのストレッチも行い、筋肉のこわばりを取るトレーニングをします。
続けていけば次第に痛みが軽くなっていき、最終的にはほぼ解消できる症状です。

実は、筋・筋膜痛は非歯原性歯痛の中でも最も多いケースとなっています。
レントゲンで調べても歯に異常がないのに痛みが続く時は、筋・筋膜痛を疑って口腔外科の歯科医師に相談してみることが大切です。
また、顔の神経痛が原因となるケースもあります。
これは、歯に関係している神経に傷がついて過敏になり、ちょっと頬に手が触れるくらいの軽い刺激でも、激しい痛みとして脳が”勘違い”するものです。
このケースでは、局所麻酔薬の軟膏や三環系抗うつ薬を使って治療を行いますので、病院に行かれた方がいいかもしれません。